『反貧困』

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

自己責任論批判、北九州市を始めとした自治体の生活保護行政批判を通して、経済的弱者がすべり落ちやすい現代の日本に警鐘を鳴らしている。
奥谷禮子の自己責任発言を批判しつつも、このような自己責任のロジックが社会に浸透してしまっていることを指摘している。
自己責任というのは妙な考えで、欧米的なもののように思われがちだが、極めて現代の日本に特有な考え方ではないかと思う。社会というのは幾多もの個人と幾多もの個人が複雑に結びついて形成されているもののはずなのに、責任を全て単一の個人へと帰してしまおうとするロジック。自己責任を盾に正社員がフリーターを軽蔑し、生活保護行政が受給者を憎む。著者の著述活動や「もやい」の活動は、このような悪夢的な現代日本社会の歪んだかたちを切り崩そうとする、小さな試みである。